校長挨拶

 

校 長  八 木 雅 夫

 高専は高度成長期の技術者育成のため、早期専門教育と実践的な技術者教育に主眼を置いた高等教育機関として設置されました。優秀な人材を社会に送り出してきた実績により、制度創設後60年となる今でも産業界から高い評価を得ています。さらに、KOSENとしてアジアを中心に国際的にも知られるようになりました。

 有明高専は、昭和38年(1963)に国立高等専門学校の第2期校として、三池炭鉱と石炭化学コンビナートの隆盛とともに急速な発展をとげた炭都に創設されました。令和5年(2023)は、有明高専創立60周年記念の意義深い節目の年にあたります。

 現在、情報化社会の後に到来するSociety 5.0、すなわちサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会に向けて、時代は進みつつあります。同時に産業構造変化、地域社会の少子化高齢化、急激なグローバル化など、さまざまな答えの明らかでない課題が現実化しており、これらを先端技術の持続的な開発を活かして解決する人財が求められています。

 高専は、これまでの実績や経験を活かしながら、多様な課題解決に積極的にチャレンジし、科学技術の成果を社会に実装することにより、社会にイノベーションをもたらすソーシャルドクター(Social Doctor 社会のお医者さん)やクリエイター(Creator)を育成することをめざしていきます。

 そのためには、多様な能力を身につけていくことが期待されます。たとえば、デザイン(クリエイティビティ)のような全く新しいものを創り出す感性や力、マネジメントをする力、人を動かす力、人の心を理解する力、問題を解決する力などがあります。また、知恵や行動力、信頼を自律的に継続的に身につける生涯学習能力も大切です。当然ですが、得られた知識を実際に応用して課題を解決する能力、チームで考え行動する能力、結果を振り返り評価する能力など様々に求められることとなるでしょう。

 有明高専では、「幅広い工学基礎と豊かな教養を基盤に、創造性・多様性・学際性・国際性に富む実践的な高度技術者の育成をめざす」ことを教育理念としています。教育の大きな特色は、高等教育機関として、実験や実習を重視した教育プログラムを大学教員と同等の教育研究能力を有する教員が、学生に密着して指導しているところです。すなわち、早期教育の利点を活かしたものづくりやことづくり、空間づくりを実践する教育の実施、創造性の開発に重点を置いた問題解決型グループ学習(PBL)の積極的な導入、確かな進路選択を可能とするキャリア教育の推進、地域と連携したプロジェクト型教育活動の展開、IT技術を活用した自学自習の学習環境整備など、常に時代の先端を行く教育の実現をめざしているところにあります。