校長告辞~卒業生・修了生の皆さんへ~
- 2020年03月19日
- その他
告 辞
~ 卒業生・修了生の皆さんへ ~
有明工業高等専門学校長 江 﨑 尚 和
令和2年3月19日、晴れて有明工業高等専門学校を卒業する199名、専攻科を修了する30名の皆様、そして、温かく見守り、強く支え続けてこられました保護者の皆様、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。ご存じのように、現在、中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延によって、有明高専の歴史始まって以来、卒業式典の開催中止という事態に至ってしまいましたこと、誠に残念で仕方ありません。この日を楽しみに頑張ってきた学生の皆さん、そしてお子様方の晴れ姿を楽しみにしてこられた保護者の皆様のご落胆はいかばかりかと思います。ただ、皆様方のご健康と、我が国における感染のさらなる拡大を防ぐため、国立の高等教育機関としての責任ある対応を選択した事に何卒ご理解を頂きたいと思います。
さて、ご卒業される学生の皆さんは、学校生活の中で、楽しかったこと、つらかったこと、うれしかったこと、悔しかったことなど、色々な思いが心をよぎっていることと思います。もっと頑張ればよかったと反省することもあるでしょう。しかし、皆さんは、無事、この卒業、修了の日を迎えられました。有明高専では『幅広い工学基礎と豊かな教養を基盤に、創造性、多様性、学際性、国際性に富む実践的な高度技術者の育成を目指す』という事を教育理念として掲げています。この理念は、「どのような学生を世に送り出すのか」という本校独自の基本方針であるデュプロマポリシーと密接に繋がっております。したがいまして、皆さんがこの理念に沿った力を身に着けたという証が本日付でお送りした卒業証書や修了証書ということになります。人生の様々な節目でこのことを思い出して頂き、これからの新しい人生を進む上での自信としてください。ただし、保護者やご家族の方々、先生方など、周りの人々の支えにより、このよき日を迎えることができたという感謝の気持ちだけは決して忘れないで頂きたいと思います。
また、日々の学業に加え、海外研修や高専祭、球技大会、文化行事などの様々なイベント、そして課外活動が、キャンパスライフを豊かにしてくれたことと思います。さらに、ロボコン、プロコンやデザコン、エコカーレースなどの各種コンテストへの挑戦、そして各種学会発表などを通じ、皆さんは素晴らしく成長されたことと思います。様々な分野で賞を受賞し、表彰を受けた人もいました。本校の学生として素晴らしい活躍をし、有明高専の名声を高めて頂いたことに深く感謝いたします。
さて、日本を含めて世界は今、大きな変革の時代に入っています。第4次産業革命やソサエティ5.0という言葉をよく耳にするかと思いますが、世の中のすべてのものがインターネットで繋がり、収集・蓄積されたいわゆるビッグデータが、人工知能AIにより分析され、そこから今まで想像もできなかった商品やサービスが次々と世の中に登場するといった時代です。超高速のデータ通信技術である5G技術の進展とも相俟って、人口減少や、少子化、高齢化、にも対抗できる革新的な技術社会が到来することとなります。皆さんは、そういった大きな変革の真只中にエンジニアとして社会に旅立ち、あるいはさらなる高度な科学技術を学ぶために大学や大学院に進学することになります。このような時代に移行してゆくが故に、今、我々人間はその役割や存在価値をしっかりと考えていかなければなりません。人工知能と人間の違いは何なのでしょうか。決定的に違うのは、人工知能は学習することによってさまざまな可能性を広げていきますが、0から1を作り出すことはできないという事です。つまり、何もないところから全く新しいものを創造することはできないのです。これに対して人間は創造性を発揮することによって、これまでに存在しない新しいものを作り出すという事ができるのです。これこそが人間の存在価値であるといえるのではないでしょうか。人間が人間らしさを十分に発揮するために、皆さんには、創造力を高める努力を絶え間なく続けて頂きたいと思います。
長きにわたり学校での時間を共有したクラスメートとの集団生活や、寮生活などを通じて培われた協調の精神、クラブ活動で鍛えた強い肉体や精神力と最後までやり遂げる忍耐力、これらすべてが皆さん方のこの先の人生で大きな支えとなってくれることと思います。在学中にできた友人、クラブやサークル、寮での先輩や後輩とのつながりは大切にしてください。皆さんにとってかけがえのない貴重な財産となるはずです。これまで皆さんを導き、成長を見守り続けた先生方にとっては、送り出す卒業生は全員が大切な宝物です。皆さんの卒業後の活躍は先生方の喜びであり有明高専にとっても誇りであることも忘れないでください。
最後になりますが、高専という特別な教育環境の中で最後まで頑張り抜いた皆さんのこれまでの努力を称えるとともに、充実した思い出深い高専生活での学びや経験を貴重な財産として、立派な人間に育ち、幸せな人生を送られることを祈念して私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
令和2年3月19日
有明工業高等専門学校長 江 﨑 尚 和