Web版高専だよりNo.10 教員の研究紹介
- 2023年04月10日
- 高専だより特集記事
今回は、エネルギーコース白川先生の研究を紹介します。
私の専門はパワーエレクトロニクス(略してパワエレ)です。耳なじみのない言葉かもしれませんが,パワエレ技術は私たちの身の回りのいたるところで活躍しています。パワエレを一言でいうと「電気エネルギーの形状や性質を変化させたり運搬したりする機器に関する技術」となります。身近なパワエレ機器としてはスマホなどの充電器があります。充電器の役割は,コンセントから出ている大きな電圧を小さく変形することであり,充電器の小型化や充電速度の向上のためにパワエレ技術が利用されています。
電気エネルギーを他のエネルギー(熱や力,光など)に変換する装置もパワエレの研究対象になります。モータは電気エネルギーを回転運動に変える働きを持っています。IHクッキングヒータは電気エネルギーを熱エネルギーに変える装置といえます。他にも多くの電気機器がパワエレ技術を利用して,みなさんの生活を支えています。
以上のように,パワエレは研究対象が非常に多岐にわたる分野となっていますが,私はそのなかでも特に地味な磁気部品(変圧器・コイル)の解析や高性能化に関する研究に注力して取り組んでいます。小学生や中学生の理科の授業で,鉄に電線をぐるぐる巻きつけて電磁石を作った経験はないでしょうか?磁気部品はその電磁石の親戚のようなもので,電圧の大きさや形を変換する回路の中で,「一時的に電気エネルギーをためておく役割」や「電気の大きさを変化させる役割」を持っています。
話は変わりますが,最近耳にする電気関係の用語の一つに「半導体」があると思います。その半導体と磁気部品が協調しあうことで多くのパワエレ装置が作動しています。半導体技術は非常に高い注目を集めており,技術開発も目覚しい速度で進められています。その一方で磁気部品の進化は少しだけ停滞気味となっています。その結果,将来的には磁気部品が足を引っ張って,進化した半導体の性能を100%発揮できなくなるかもしれません。そういった事態を避けるために,磁気部品の技術開発を促進してゆくのが私の研究活動の重要な役割だと考えています。とても地味で地道な活動ではありますが,私の研究が皆さんの生活を支える一助になれば幸いです。