有明高専と東京大学が半導体人材育成で包括連携協定を締結
有明工業高等専門学校と東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(所在地:東京都文京区、センター長:池田誠、以下「d.lab」)は、令和7年1月31日、半導体人材育成分野における包括連携協定を締結いたしました。
本協定は、半導体産業の発展に不可欠な人材育成を強化するため、両機関が連携し、教育・研究資源の相互活用、学生・教職員の交流、産学官連携の推進などを図ることを目的としています。
- 左から八木校長、石川サーキットデザイン教育センター設置準備室長、池田センター長
連携の背景
近年、半導体産業は、AI、IoT、自動運転などの技術革新により、その重要性を増しています。しかし、国内では半導体人材の育成が課題となっており、特に設計分野における人材不足が深刻化しています。有明高専とd.labは、これまで研究活動の交流がありましたが、本協定の締結を機に、より緊密な連携体制を構築します。また、有明高専は、東大と全国の国立高専と繋ぐハブとなり、半導体人材育成を加速化させます。
有明高専は、独立行政法人国立高等専門学校機構が推進する次世代基盤技術教育のカリキュラム化(COMPASS5.0)半導体分野プロジェクトにおける実践校として、半導体設計人材育成を推進しています。また、令和7年度初頭には、サーキットデザイン教育センター(CDEC、仮称)の設置を予定しており、全国の国立高専におけるサーキットデザイン教育の拠点となることを目指しています。 「サーキットデザイン教育」とは、サーキット(回路)とデザイン(設計)を組み合わせた造語で、本校創造工学科人間・福祉工学系の石川洋平教授が提唱する半導体・集積回路の多世代・早期教育プログラムです。
一方、d.labは、文部科学省の「次世代X-nics半導体創生拠点形成事業」における『Agile-X~革新的半導体技術の民主化拠点』として、半導体分野の研究開発を主導しています。また、東京大学学部横断型教育プログラム「半導体教育プログラム(SPIRIT)」を開始し、半導体製造を担う人材育成にも注力しています。
連携の内容
両機関は、以下の事項について連携・協力して推進いたします。
教育の質の向上:双方の教育資源を活用し、学生が即戦力として活躍できる実践的な知識・技術と、将来の半導体産業を牽引する研究開発能力を兼ね備えた人材を育成します。
研究及び産学官連携の推進:将来的な共同研究開発を見据え、研究交流や情報交換を通して連携基盤を構築し、互いの研究開発能力の向上に努めます。その過程で、産業界とも連携し、技術の社会実装を促進します。
学生・教職員の交流の推進及び資質の向上:学生・教職員の交流を促進し、相互の知見や経験を共有することで、教育・研究の質向上と人材育成の活性化を図ります。
その他、本協定の目的を達成するために、双方が必要と認める事項:必要に応じ、包括連携の目的を達成するために必要な事項を定めます。
- 八木校長
- 池田センター長
今後の展望
現在、高専機構には51校55キャンパスに約5万人の学生が在籍していますが、半導体・集積回路設計の基礎教育を体系的に受けられる場所は限られています。有明高専では、低学年から半導体・集積回路設計の基礎を学び、段階的に専門性を高めていくカリキュラムを整備しています。座学だけでなく、実際にICチップを試作する経験を通して、設計から製造までのプロセスを理解し、実践的な知識とスキルを習得できます。さらに、産学連携マッチングラボを通じて半導体関連企業と連携し、最新の技術動向を反映した教育内容を提供することで、学生は常に業界のニーズに合わせた知識を身につけることができます。
有明高専は、IC設計系企業への就職実績に加え、産学連携マッチングラボでの共同研究・人材育成、地域の小中高生へのサーキットデザイン教育など、多岐にわたる活動を通じて、半導体設計人材の裾野を広げることに貢献しています。これらの実績から、有明高専は、継続的な専門人材育成を通じて、設計人材の裾野を広げ、研究レベルの向上に貢献することが期待されています。このような有明高専の取組は、他の高等専門学校や大学のモデルケースとなり、サーキットデザイン教育が全国に普及することで、より多くの若者が半導体・集積回路設計に興味を持ち、その分野で活躍できるようになることが期待されます。
署名式では、八木校長から「CDECの活動を通し、地域社会の発展に貢献し、日本の半導体産業の再生を牽引する存在となることを目指したい」と述べました。また、池田センター長からは「若い人が半導体に興味を持ち、専門性を深める上で大変有意義な連携である」と述べました。
有明高専とd.labは、本協定に基づき、緊密な連携を図りながら、半導体人材育成を強化し、我が国の半導体産業の活性化と国際競争力の強化に貢献してまいります。