研究の紹介
- 2018年03月27日
- 高専だより特集記事
次の2名の先生方に、研究について紹介いただきます。
○創造工学科(環境・エネルギー工学系)教授 榎本尚也先生 専門分野:無機材料化学
うまい酒はなぜうまい?〜私の専門は機能性セラミック微粒子の合成ですが、ちょっと変わった視点から独自のアプローチを試みています。
水とアルコール(エタノール)の混ざり方によって酒の風味が変わる、という醸造学の見方があります。水とエタノールを混ぜると直ちに均一透明になりますが、これは大まかに言うと目に見える光を散らさないということで、その均一さの尺度は1 mmの1/2,000ほどです。これに対し、水やエタノール1つずつの大きさは遥かに小さく、1 mmの1/10,000,000ほどなので、目で見て透明でも混ざり方に違いがあって、それが味の違いと関連しているかもしれない、という考え方です。
セラミック微粒子を作るときにも水とエタノールの混合溶媒がしばしば用いられます。水溶媒での合成では成し難い物質を得ることができ、また、水とアルコールとの混ざり方に起因すると推定される形態変化により微粒子の特性が驚くほど変わることがあります。
「酒の味」はヒトの感情や周囲の環境によっても大いに変わる可能性がありますが、「微粒子のでき方」は条件さえ揃えばまったく同じはずです。セラミック微粒子は、環境、エネルギー、エレクトロニクス、医療分野まで幅広く応用されており、その形態や構造を精密に創り上げることは重要な基盤技術です。「美味しい酒」の混ざり方に学び、「社会に役に立つセラミック微粒子」を創り上げることを目指しています。
○創造工学科(人間・福祉工学系)教授 内海通弘先生 専門分野:信号処理工学
内海研究室では、電子情報の分野を専門に研究を行い、特に、レーザーの応用研究を主たるテーマとして、人間の住む空間や福祉の保全の観点から研究を進めています。
例えば、空気中に二酸化炭素が増えて、地球が熱くなっていますが、それを遠隔で高精度で計測するレーザーレーダーを開発しています。また、私達の健康を保つため部屋の湿度管理は重要です。最近湿度の急激な変化が脳に悪い影響があると言われていますが、空間中3次元の湿度のリモートセンシングセンサーを開発しています。また、植物のクロロフィル、フェルラ酸、水枯渇度などを瞬時に画像処理するレーザー・イメージング技術の開発を行ってきました。また、川などに流された微量でも悪影響のある物質を検出するための表面プラズモンセンサーの研究を行っています。最近では、殺虫剤やがんの薬として注目されているバチラスチューリンゲンシスなどバクテリアの瞬時判別画像処理AIなど多様なテーマに挑戦しています。