Web版高専だよりNo.11 教員の研究紹介
- 2022年09月30日
- 高専だより特集記事
◆Web版高専だよりNo.11◆
教員の研究紹介
今回は金田先生の研究を紹介します。
〇 創造工学科建築コース 金田 一男 先生
私の専門は建築構造学です。建築構造は、建物の骨組みを構成する形式や材料などを含めた総称です。建築構造には鉄筋コンクリート構造(RC造)、鉄骨構造、木構造などの形式があります。建築構造の役割は、内外から建物に作用する力に対して建物が崩壊しないように建物を保つことです。建物に作用する最も大きい外力の一つは地震時に建物に生じる慣性力です。写真1は、熊本地震によって崩壊したRC造ピロティ建物の実例です。この建物の1階のRC柱が慣性力及び建物の自重によって曲げ破壊やせん断破壊のいずれか又は両方が起こり、1階の層崩壊が生じています。
当研究室では、写真1に示すようなRC造ピロティ建物の耐震補強工法の開発を研究テーマとし、ローコスト(経済性が良い)、ローテク(施工性が優れ、施工時に振動・粉塵が生じにくい)、スモールチェンジ(ピロティ建物の元々のオーペンスペースへの影響が小さい)な耐震補強工法として、強度(地震時の慣性力に抵抗できる強さ)及び靭性(大地震時の変形能力)が共に向上できる「PC鋼棒で緊結した鋼板サンドイッチ工法」により補強した既存RC柱の耐震性能研究を行っています。
図1は、PC鋼棒で緊結した鋼板サンドイッチ工法により補強した既存RC柱断面を示し、図2は補強した既存RC柱の抵抗能力を表すせん断力Vと変形能力を表す部材角Rとの関係を示しています。図2からわかるように、補強後の値(実線)は補強しない値(破線)より大きくなっており、補強試験体の耐震性能が大きく向上したことを意味しています。
令和3年度より、更に、科研費の採択課題として、上記工法を「大地震で大きく損傷した既存RC柱の耐震補強技術」に適用し、建物の震後耐震補強技術開発を遂行しております。