Web 版高専だよりNo.8 教員の研究紹介
- 2021年04月06日
- 高専だより特集記事
今回は、村端先生の研究を紹介します。
〇一般教育科 助教 村端 啓介 先生
私の研究分野は英語教育と応用言語学です。
これらの分野に関する論文や実際に自分で集めたデータを分析し、「英語で討論ができる日本人英語使用者の育成」のための教育方法や教材を開発することを目標として研究活動を行っています。
その分野の中でも、特に「ポライトネス(Politeness)」(Brown & Levinson, 1987)が私の研究テーマです。
ポライトネスとは、私たちが普段身の回りの人に対して行う「言語的配慮」を意味します。
例えば、年上の人や知らない人に対して敬語を使用したり、相手への気遣いとして思ったことを直接的に言わないような配慮を、意識的・無意識的に私たちは常に行っていますよね。
もちろん文化によってこの配慮の捉え方や方法は異なります。
異文化で育った人を相手に英語を使用する場合にこの配慮とどう向き合うべきかを明らかにすることが私の研究の目的です。
具体的には、
1)質問行為:良質な質問が学習効果を促進する、さらに日本人学生の質問の頻度が低いという先行研究を踏まえて、クラス内で学生が質問する頻度が低いのは過度な言語的配慮が原因なのではないか、どのようにして学生がもっと授業中に質問をするようになるのか。英語でより良質な(より高次の)質問をするためにどのような指導が効果的か。
2)クリティカルシンキングスキル:「批判的思考」と日本語で訳されるこの思考スキルを習得、使用する場面でも、他者への配慮が影響するのではないか。相手によって深く考えることができない、考えたことを発言できない状況を変えるためにはどのような取り組みを行うべきか。
3)言語転移:この「ポライトネス(言語的配慮)」は言語間でどのように転移するのか。日本人が異文化(例えば英語ネイティブ)のポライトネスを習得することは可能なのか、その条件や度合いはどのようなものなのか。そしてその逆の、日本人が英語ネイティブのポライトネスを習得した場合、母語である日本語へはどのように影響するのか。
これらの疑問や課題に関して、少しでも教育的に有意義な発見をするために活動をしています。
自動翻訳機では翻訳しきれない言語的な側面について少しでも考える時間が持てるように、研究成果を高専の教育にも少しずつ取り入れていきたいと思っています。